太陽光パネル処理の注意点:有害物質とSDSの必要性について
脱炭素の強力な推進力となる再生可能エネルギー。特に太陽光パネルについては、2012年の固定価格買取制度(FIT)の開始以降、多くの場面で目にするようになり、今後さらに国策として導入が進むと予想されています。
その一方、「太陽光パネルの2040年問題」も取り上げられています。これは、2040年前後にパネルが大量廃棄されるとの予想に基づくもので、現在、多くの循環資源業者やリサイクラーが太陽光パネルの処理技術の開発・展開を進めています。
太陽光パネルを処理する際に留意したいことについて、お伝えいたします。
廃棄時にはSDSが必要
太陽光発電設備には、有害物質が含まれているケースがあります。それを把握せずに処理をしてしまうと、環境汚染に直結するおそれがあります。したがって、太陽光パネルの処理方法は一律に行えるものではなく、廃棄するパネルのSDS(安全データシート)を確認したうえで、適切な方法を選択することが求められます。
以下に太陽光パネル・発電設備含まれる懸念のある有害物質を挙げます。
六価クロム
六価クロムは、発がん性が極めて高く、皮膚に付着すれば炎症を、吸い込めば呼吸器系の疾患を引き起こす特定化学物質です。
「太陽光パネル自体に、そんな危険なものが使われているのか?」と疑問に思うかもしれません。多くの場合、六価クロムはパネル本体ではなく、パネルを支える「架台」の防錆メッキ処理に使用されている可能性があります。特に、コスト削減が優先された安価な海外製の架台などで、そのリスクが指摘されています。
この六価クロムが厄介なのは、処理が極めて困難な点です。通常の廃棄物処理施設では対応できず、専門知識、厳重な管理体制、そして特殊な処理設備を持つ限られた業者しか扱えません。そのため、処理費用も桁違いに高騰します。
セレン
太陽光パネルには、大きく分けて「シリコン系」「化合物系」「有機系」「量子ドット系」の4つの方式があります。このうち、化合物系に含まれることがあるのがセレンという物質です。セレンは必須微量元素であり、適量であれば健康に良い影響をもたらしますが、過剰摂取すると健康被害を及ぼすおそれのある物質です。
化合物系の太陽光パネルの場合、このセレンが半導体の原料に含まれることがあります(ただし、使用しているメーカーは限られます)。
その他の有害物質
それ以外にも、鉛(結晶シリコン系太陽光パネルの一部材料として使用される場合がある)、ヒ素(太陽光パネルのセルの原料として使用されることがあり、特に変換効率の高いパネルに採用される傾向が見られます)、カドミウム(カドミウムを原料とする半導体が使用される場合がある)、アンチモン(太陽光モジュールのガラス成分に多く含まれていることがある)、といった物質が挙げられます。
有害物質が含まれている場合、リサイクル方法も限られます。どのような物質が含まれている太陽光パネル・設備なのかを事前に把握しなければ、適切な処理方法は判断できません。
太陽光パネルの処理は準備をしっかりと
上記のような事情から、太陽光パネルの処理には周到な準備が必要といえます。私たちACPグループでは、処理にあたり、お客様への必要情報のご提示依頼から適切な処理方法のご提案、実際の処理(協力業者と共に実施)までを一貫してサポートしています。
どのような成分が含まれているかによって、処理費用や回収までの期間が変動しますので、お早めにご相談くださいますようお願い申し上げます。

新たな技術やインフラが生まれれば、新しい製品が世にあふれ、それが一定期間を経て廃棄物となり、我々のようなリサイクラーによって資源循環のサイクルへと流していきます。この太陽光パネルは脱炭素・地球環境保全の有効施策として世に広まったわけですが、資源循環という点において、懸念事項を持つものであるものというのは事実です。
適切に処理をしなければ、地球環境に悪影響を与え、結局何がしたかったのか分からなくなっていしまいます。私達は、資源循環を担う事業者として、適切な処理方法のご提案をしっかりとしていくことが使命であると考えております。太陽光パネルの処理のご予定がある場合は、お声がけいただけますと幸いです。