お知らせ
【廃棄物動向】資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律
令和7年2月1日より施行された「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律(以下、高度化法)」をご紹介します。
この法律は廃棄物処理業界だけでなく、製造業に従事されている皆様にとっても大きな意味を持つものです。資源循環の新たな流れを構築することを目的としており、製造工程における原材料調達においてリサイクル品の活用が進むことが期待されています。
高度化法の背景:脱炭素社会への転換
高度化法の根底には、脱炭素社会への移行という大きな流れがあります。国の試算によれば、廃棄物処理業自体の温室効果ガス(GHG)排出量は全体の3.2%にとどまりますが、処理工程から生まれる再生資源を活用することで、国内全体のGHG排出量の約36%を削減できる可能性があるとされています。
つまり、バージン材に代わってリサイクル資源を利用することは、地球温暖化対策への大きな一歩となるのです。このような背景から、高度化法では、効率的かつ高品質な再生資源原料の製造に焦点が当てられています。
さらに現在、「静脈産業の脱炭素型資源循環システム構築に係る小委員会」において、法律の具体的な運用ルールも議論されています。製造業者がリサイクル原料を選びやすくする仕組みの構築が目指されています。
廃棄物処理業者への主な施策
高度化法では、主に以下の3つの取り組みが廃棄物処理業者に求められています。
事業形態の高度化
製造業側が求める質・量の再生資源を安定的に確保するため、広域的な分別収集・再資源化事業の推進が求められます。この計画が環境大臣に認められると、廃棄物処理業者に対して業許可の特例が認められます。製造業者としては、処理業者と連携することで安定的な資源供給体制を築くことが可能です。
高度分離・回収事業の推進
特に分別が難しい廃棄物(例:太陽光パネル)について、有用な部分を分離・回収する取り組みが評価され、認定されることで特例措置の対象となります。
再資源化工程の高度化
再資源化工程の効率化や温室効果ガス排出量の削減に寄与する設備導入計画が認められた場合、業許可の変更において緩和措置が適用されます。
製造業者に求められる対応
高度化法では、製造業者にも以下のような取り組みが求められています。
・廃棄物を分別して排出し、その再資源化を進めること。
・製品設計段階から、廃棄後に有用部分を分離しやすくする工夫を行うこと。
・再生資源や再生部品を積極的に活用し、資源循環型のものづくりを推進すること。
これらの対応は単なる法令順守にとどまらず、今後のエシカル消費の広がりや、カーボンプライシングの導入など、社会的・経済的な変化にも対応する重要な視点となります。価格や品質面での課題もありますが、長期的には再生資源の価値が高まっていく可能性があるでしょう。
ACPグループとしての支援
高度化法の施行を受け、今後さまざまな動きが本格化していくと予想されます。この法律の目的は、より高度な資源循環の実現です。再生資源を活用した製品が選ばれる時代が近づいています。
製造業に携わる皆様にとっても、今後の製品設計や原材料選定の在り方を見直すきっかけとなるかもしれません。 ACPグループでは、幅広いネットワークを活用し、皆様の再資源化に関する課題解決をサポートいたします。 より詳しいご相談をご希望の際は、どうぞお気軽にお声がけください。
【廃棄物動向】太陽光パネルの処理について
太陽光パネルのリサイクルに関する議論が、国を中心に行われています。経済産業省と環境省が共同で運営する「太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」と「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」では、太陽光パネルの処理方法について議論が進められており、2025年の制度化を目指していると言われています。
太陽光パネルの処理に注目が集まる理由
太陽光パネルの廃棄量は、2030年代半ばから増加し、最大で年間50万トン程度に達すると見込まれています。しかし、現状では廃棄される太陽電池モジュールに対するリサイクルは義務付けられておらず、廃棄物処理法に則って適切に処理されることになっています。さらに、太陽光パネルは分別が困難であることや、リサイクルルートが確立されていないことから、リサイクルされずに最終処分となるケースが多くあります。もし排出量すべてが最終処分された場合、その量は非常に多くなり、最終処分場の残余量減少に大きな影響を与える可能性があります。
国で議論されている太陽光パネルリサイクル
そのような観点から、太陽光パネルのリサイクルの制度化は非常に重要なテーマであり、その議論が行われています。
太陽光パネルリサイクルの実情
・アルミや銀、銅等の価値が高い資源が含まれており、これらについては一定の再資源化が行われている
・重量比約6割を占めるガラス等については、現状では、品質や経済性の観点から、市場原理だけでは再資源化が進みづらい
・処理にあたっては拡大生産者責任の考え方の適用が望ましいが、太陽光パネルは海外輸入のものが多く、より一層の連携が求められる
上記の実情を踏まえ、使用済太陽光パネルが関係者間で適切に受け渡され、確実に再資源化が行われる制度を構築することが必要であるとされました。 ガラスリサイクルについては板ガラスへのリサイクル実証が成功しているということもあり、リサイクル技術の進展で解決策を見出そうとしており、その他の課題においては制度で規定する流れが取られようとしています。分別技術についても、新たな機能を持つ処理機械の開発も進められている実情があります。
また、新たな制度内では、再資源化を行うにあたっての費用については、太陽光パネルの破棄時に解体・処分費を徴収する仕組みでは、財源確保の予見がたたないため、設置時において納付し、第三者機関にで管理して、必要な時期に拠出する流れが想定されています。
まとめると
このように、太陽光パネルの処理・再資源化については処理技術の開発という領域で収まらずに、制度として規定される方向性で議論が進められています。日本国内における廃棄物排出量は減少傾向にあります。特に、最終処分量においてはリサイクル技術の進展により、約20年前と比べると大きく減少している事実があります。その中で、太陽光パネルをどのように処理するかというのは大きな課題であるといえます。
また、太陽光パネルを所有している方々においては、或いは、その処理を担う方においては、今後発生量が増えていくことが見込まれる中で、早々に処理業者との接点を持っていただくことも重要かと思います。当社では、太陽光パネルの処理の相談をお受けすることも可能ですので、お気軽にご相談ください。
【法情報】プラ新法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)について
廃棄物業界の動きとして、2022年4月に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」についてご紹介いたします。 資源循環に関する法律ですが、事業者・廃棄物処理業者に限らず、私たち個人の日々の生活にも深く関わる法律です。この法律について解説します。
プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下、プラ新法)の目的
・製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取組(3R+Renewable)を促進
・プラスチックの資源循環を促進する必要性が高まっていること
プラ新法における個別の役割
設計・製造
・製造事業者等が努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定
・指針に適合した製品であることを認定する仕組み
・認定製品を国が率先して調達(グリーン購入法上の配慮)
・リサイクル材の利用に当たっての設備への支援
販売・提供事業者
・ワンウェイプラスチックの有償化や提供の抑制
・代替素材への転換や再利用可能な製品の推奨
排出・回収・リサイクル段階
・市区町村の分別収集・再商品化
①プラスチック資源の分別回収を促す為に、容器包装リサイクル法に基づくルートの活用を認める
②市区町村と再商品化事業者が連携して行う再商品化計画の策定
・製造・販売事業者等による自主回収
①自主回収再資源化する計画の策定と実施
②認定事業者には廃棄物処理法の許可が不要となる特例が適用される
・排出事業者の排出抑制・再資源化
①排出事業者が排出抑制や再資源化等の取り組むべき判断基準を策定
②排出事業者等が再資源化計画を作成
・特定プラスチック使用製品提供事業者について
①対象となるのは、飲食店や小売店で提供されるプラスチック製のフォークやスプーン、ホテルのアメニティ、衣類の包装カバーなどである
②一定量以上の特定プラスチック使用製品廃棄物を排出する事業者が、排出量削減の取り組みを著しく怠った場合、勧告・公表・命令などの措置が取られる
どのような変化が想定されるか
本法律の施行により、今まで一般廃棄物として処理され、自治体のクリーンセンターなどで焼却処理・サーマルリサイクルをされていたプラスチックを焦点にあてたマテリアルリサイクルルートの構築が可能となります。マテリアルリサイクルを行う際、最も重要なことは集荷時における荷の品質をどこまで一定に保つことができるかという部分ですが、製品単位の回収ルートの構築、行政回収に新たな一品目を加えることで、その課題を解決することが期待されています。
また、その制度構築にあたって、業の許認可の問題・設備投資(回収・処理インフラの構築)に関しても支援策や特例が認められることにより、仕組み構築の難易度を下げています。とはいえ、費用や制度的な部分だけではなく、今までの事業インフラの有無という参入障壁は未だ高く、既存の処理フローをどのように改善し、これを仕組化するかという部分が現状の認識といえます。
一方、脱炭素社会が進むにつれて、リサイクルループ・サーキュラーエコノミーに対する経済合理性(社会的責任の遂行と実利双方を踏まえた)も取れるようになっていくことが想定される中で、新たなリサイクルルート構築に関する事例が生まれてくる期待もあります。
まとめてみると
製造段階から提供・販売・処理という工程で各事業者に対する役割を明確にすることで、プラスチックの資源循環を促すことを目的としています。プラスチック資源とされていますが、対象となるのは主に一般廃棄物(家庭や事業所から排出される廃棄物)です。個人から排出する廃棄物の場合では、一部自治体ではごみ回収の区分のひとつに「プラスチックごみの日」が加えられるなどしているケースも見られます。
廃棄物に関する法律では、直近これ以外に「再資源化事業等高度化法」という法律が2024年5月に公布されており、いずれも、資源循環フローの全体的なレベルアップを目指すものであり、マテリアルリサイクルを促進するために、製造・提供・排出・処理に関わる各事業者・個人に対して役割を定義するものとなります。
今後の法規制などについてもピックアップし、皆様にお伝えができればと思います。