【廃棄物処理法変更情報】スクラップヤードの許可制度導入について
廃棄物処理法の変更が第221回国会(令和8年2月16日~7月17日)において審議されました。変更点は「スクラップヤードの規制強化」と「災害廃棄物の処理の推進」の二つが挙げられてます。本法変更は、国会での審議をすでに終えており、令和8年6月12日に衆参議院で可決、令和8年6月19日公布されています。
「スクラップヤードの規制強化」は公布後2年6か月以内に、「災害廃棄物の処理の推進」は公布後3か月以内に施行されることとなります。皆様にとっても身近といえる「スクラップヤードの規制強化」について、法律改正の背景と概要について説明してまいります。
確かに廃棄するもの。しかし、価値があれば有価物として扱われ廃棄物ではない
価値を積み増していく動脈産業に対して、廃棄するものを扱う静脈産業は非常に見えづらさを持っています。その中で不法投棄などの環境課題発生を抑制するために、各種法律が施行されてきました。
その大前提として考えられるのが、その物が廃棄物か否かという点です。これまで、物の性状や排出の状況から判断する「総合判断説」を用いて、廃棄物であれば廃棄物処理法で扱い、それ以外については捉えることができないというのが実情でした。
廃棄物処理法で捉えられる部分では、業の許可などを用いて規制をすることができましたが、廃棄物処理法で扱えないものはどうしようもありません。
「有価物」という隠れ蓑と、不適切ヤードの増殖
鉄、アルミ、銅などの金属スクラップや、プラスチックが混在する雑品スクラップ。これらは取引市場において価値を持つため、長らく「有価物」として扱われてきました。つまり、「売れるのだから廃棄物ではない」という大義名分により、廃棄物処理法の厳しい規制(施設の設置許可や保管基準など)から完全に逃れていたのです。
この結果、空き地や農地跡に高い塀を立て、無許可のまま有価物という名目でスクラップを山のように積み上げる「スクラップヤード(ヤード業者)」が全国各地に乱立しました。優良なリサイクル事業者がいる一方で、環境への配慮を持たない一部の悪質な業者が容易に参入できる無法地帯となってしまったのが実情です。彼らは行政の立ち入り調査に対しても「これは将来売却する大切な資産(有価物)だ」と主張し、指導を拒み続けてきました。
なぜ今、国による法整備が必要だったのか?
こうした不適切なスクラップヤードは、周辺の生活環境に深刻な被害をもたらし、社会問題化しています。代表的なトラブルは以下の通りです。
大規模火災の頻発
リチウムイオン電池などが混入し、圧縮時や自然発火によって燃え上がる事例が多発。金属やプラスチックの山の火災は水が届きにくく、鎮火に数日を要します。
有害物質による土壌・地下水汚染
むき出しの土の上に野積みされるため、雨が降ると機械類の残留オイルや重金属が地中に浸透してしまいます。
騒音・振動・粉塵の被害
重機による解体音や粉塵が住宅街に飛散し、近隣住民の健康被害や苦情の温床となっています。
事業者の夜逃げと不法投棄
価値のある金属だけを抜き取り、残ったゴミ(無価物)を敷地内に放置して逃亡するケースが散見され、撤去費用が自治体の財政を圧迫しています。
危機感を抱いた各自治体は独自に「ヤード規制条例」を制定しましたが、規制が強まると隣の県へ業者が移動するだけの「いたちごっこ」が続いていました。地方自治体の条例だけでは限界があり、ついに国が法律(廃棄物処理法)による全国一律の規制に踏み切ったというのが、今回の法改正の背景です。
スクラップヤードの「許可制度」導入:新制度の概要と基準
今回の法改正の最大のポイントは、これまで廃棄物処理法の対象外だった有価物のスクラップヤードに対して、環境保全の観点から明確な法的網が被せられた点です。
具体的には、生活環境保全上の支障が生ずるおそれがある雑品スクラップなどを新たに規制の対象として位置づけました。そして、これらの保管や処分を業として行う事業者に対し、「都道府県知事等の許可」を受けることを法的に義務付けたのです。
これまで自治体の条例に依存していた規制が、国の法律による全国一律の厳格なルールへと変わります。許可を取得し、事業を継続するためには、従来の産業廃棄物処理施設に匹敵する厳しい基準をクリアしなければなりません。主な規制内容は以下の3点に集約されます。
施設・設備の厳格化
これまでの「むき出しの土での野積み」は認められなくなります。有害物質の地下浸透を防ぐため、ヤードの床面をコンクリート等で不浸透性舗装することが求められます。また、機械類から漏れ出る油の流出を防ぐ「油水分離槽」の設置や、騒音・粉塵の飛散、スクラップの崩落を防ぐための十分な高さと強度を持った囲いの設置が必須となります。さらに、社会問題化している火災に備え、延焼防止措置や初期消火設備の導入も求められます。
管理・運営の透明化
業者の裁量に任されていた運営管理にもメスが入ります。取り扱うスクラップがどこから来てどこへ行くのか、搬入・搬出に関する帳簿の作成と保存が義務化され、トレーサビリティ(追跡可能性)の確保が求められます。また、敷地面積や構造に応じた適正な「保管量の上限」が設定されるため、危険な無秩序な山積みは禁止されます。
違反時の厳格な対応
無許可で営業した場合や、基準に違反して行政の改善命令に従わない場合は、許可の取消しにとどまらず、懲役や高額な罰金といった非常に厳しい罰則が科されます。これにより、環境対策に適切な投資ができない悪質な業者は、事実上市場から排除される仕組みとなっています。
スクラップも産業廃棄物と同等レベルの「業者の選定」の時代へ
これまで、スクラップの売却先は「一番高く買ってくれるところ」というコストメリットだけで選ばれがちでした。 しかし今後は、廃棄物処理業者を選定するのと同じレベルの厳しい監査が求められることが予想されます。 机上の契約だけでなく、実際に現地(ヤード)へ足を運び、以下の点をご自身の目で確認することが必要です。
・床面がコンクリート舗装されているか(土の上に野積みされていないか)
・高い塀やフェンスで適切に囲われているか
・敷地外へ油などが流出していないか
こういったことが守られていない業者に売却することは、同時に、皆様方自身の責任を問われかねなくなります。業者のご紹介はもちろんのこと、既存業者に対するチェックの観点など、お伝えすることもできます。昨今では金属相場も高騰しています。スクラップの売却額だけでも、相応の利益貢献もするものですが、コンプライアンスの視点も改めて重要です。


